彼は名前を直紀と名乗った。

直紀は以前あたしが住んでいた街でもバーテンをしていたらしい。

昔 通っていたBarでも働いていた事があると 驚きの事実も発覚し。

話し相手なんか要らないと思っていたあたしは すっかり直紀と打ち解けていた。



少し小柄で 引き締まった身体に あごひげ。



まいった。ホントにタイプだ。



暫くは恋をしたくなかった。面倒だ とも思っていた。

だって。うまくいくとは限らないから。

それに。またもやバーテンだ。



「夜の男の言う事なんて 信用しちゃダメだよ」



昔 好きになった人に言われた言葉。

「信用するな」と言われても 好きになるのは夜の男ばかり。

「信用しろ」と言われた方が信用できないと 思ってしまうあたしは 天邪鬼なのか。

少し自嘲気味に笑った。