その店を見つけたのは偶然だった。



今の家に引っ越してきてから1年。静かな住宅街。特に遊べる場所もない。

ちょうどいい。彼に捨てられてから暫く出かける気にもならなかったから。



その店に入ったのは気まぐれだった。



オレンジ色の看板。地下に続く階段。Barのようだ。

地下でも薄暗くは なさそう。

家の近くにこんな店があるなんて。





「いらっしゃいませ。・・・始めまして。ですよね?」



ただ飲みたかっただけ 独りで 少し。話し相手は要らなかった。

面倒だな・・・と思いながら顔をあげた。

優しそうな笑顔だった。甘い声だった。



・・・やばいな。タイプだ。



惚れっぽいのは否めない。