そのテンションでバレンタインには大量の友チョコと、一つの本命チョコならぬアーモンドケーキを用意した。

当日はいつもより大荷物の女子が教室でこそこそとお菓子の交換をして、行きも帰りも結局荷物はパンパンだった。

「…これ、あげる」

人の少ない掃除の前の時間帯に、教室でこっそりと渡した小さな紙袋を、崎口は照れかくしてでぶっきらぼうに受け取った。

「じゃ、じゃあ!」

恥ずかしすぎて、逃げるように掃除場所の旧体育館に向かった。


もう、返事がどうのっていう思考は抜け落ちていて、掃除の終わる時間に教室掃除のはずの崎口が体育館に来た時は何事かと思った。

同じ班の子達が、気を利かせて2人にしてくれて、そこからは私がジタジタとする時間。

「いや、一応、返事とか」
「え、ちょっと待って。ちょっとまとう。待って!」

もうただただどうしていいか分からなくて。

告白はされたりしたことはあるけれど、告白して返事をもらうなんてことは初めてで。

「いいからじっとしてろって」

崎口が呆れてそう言うので、とりあえずステージに座って正面から顔を見るのを回避して返事を聞く。

「いや、まあ、うーんと、さ。まあ、俺だって、白井だった、いいし」
「は?なに、いいって?」
「だから、付き合うとか、いいし。ていうか、普通に、嬉しい?し」

なんで、嬉しいが疑問系なんだとか。

そんなこともちょっとだけ思ったけれど、かなり照れてどうしていいかわからなくなっている崎口に、さっきまで恥ずかしがっていた私は逆に冷静になれた。


「えっと、じゃあ・・・両おも、い?」
「・・・うん、まあ、じゃねえの?」


今思えば歯がゆくて。
むしろ全身がかゆくて。


なかなか青春なバレンタインだった。