俺は病気にかかったことがある。
癌だった。嫌な響きで嫌いだった。俺は軽くはあったが、転移が少し心配されたので手術を行った。その時の傷は残ってるし、まだ転移することが百パーセントなくなったわけでもなかった。いや、医者にはする可能性が高いと言われた。
俺は怖かった。
例えば精巣ガンなどの治る確率が高い病気ならまだしも、俺は小児がんだった。はじめはただの風邪かと思った。
熱が出て気持ち悪くて、ただひたすら食べたものを吐き出し、また食べては吐き出した。母親は諦めていたし、父親はいえにすら帰ってこなかった。だけど12上の姉が俺を病院まで連れていった。
やつれた俺の頬を撫でて姉は『ごめんね』と呟いた。俺が何もわからず混乱していると、『うちのお母さん達があなたの面倒みれなくてごめんね。私のせいなの』と今にも途切れそうな声で呟いた。
姉は苦しそうに俺のことを抱きしめた。俺は何もわからなくてただ泣かないで、と繰り返していただけだった。姉曰く、母親が鬱病になったのは自分が迷惑をかけたからだという。
姉は学校でというか、進学先で悩んでいることが多かったらしい。母親はそれについて一緒に悩み、解決しようとしたらしい。そして結局姉は看護師になった。母親は満足したのか何も言わなくなった。
それは鬱病からくる脱力らしい。俺はそこら辺学がないから全くわからないのだが、母親はもう俺たちに興味はなくて、猛烈に死にたいと願っているらしい。その頃の俺は何を言っていいかわからず『大丈夫。一人で生きていけるから』と返したらしい。
そして診断結果は小児がん。姉は絶望した顔をした。俺はやっぱり何もわからず姉を見ることしか出来なかった。姉は悲しくて苦しそうな顔をして『それは、どうすれば治りますか?』と言っていた。
「手術ですね。一度取り除いてから様子を見ましょう」
姉はそれから毎日俺を病院に連れて行った。何があっても毎日欠かさず。だから俺は修学旅行も林間学校も行ったことがない。それについて俺はなんとも思わず何も言わなかった。
時々襲ってくるなぞの頭痛。それは小児がんの症状のひとつだと言う。俺はもう死ぬんだな、と思った。姉は頭を抱えた。そして迎える手術の日。結果は成功。しかしその一年後に再発。またもや頭痛がやってきた。その時に医師が切羽詰まった顔で言った。俺の余命は5年。そう宣告された。姉はとうとうショックで寝込んでしまった。俺に残された自由時間はあとは5年。俺はそれをなんとも思わなかった。怖いとすら感じなかった。
まだ五年もあるじゃん。頑張ろ。姉貴。
そういうしかなくて悲しくなる。しかし手を差し伸べた時の顔は少し悲しそうで嬉しそうだった。俺はその笑顔だけで十分だった。
癌だった。嫌な響きで嫌いだった。俺は軽くはあったが、転移が少し心配されたので手術を行った。その時の傷は残ってるし、まだ転移することが百パーセントなくなったわけでもなかった。いや、医者にはする可能性が高いと言われた。
俺は怖かった。
例えば精巣ガンなどの治る確率が高い病気ならまだしも、俺は小児がんだった。はじめはただの風邪かと思った。
熱が出て気持ち悪くて、ただひたすら食べたものを吐き出し、また食べては吐き出した。母親は諦めていたし、父親はいえにすら帰ってこなかった。だけど12上の姉が俺を病院まで連れていった。
やつれた俺の頬を撫でて姉は『ごめんね』と呟いた。俺が何もわからず混乱していると、『うちのお母さん達があなたの面倒みれなくてごめんね。私のせいなの』と今にも途切れそうな声で呟いた。
姉は苦しそうに俺のことを抱きしめた。俺は何もわからなくてただ泣かないで、と繰り返していただけだった。姉曰く、母親が鬱病になったのは自分が迷惑をかけたからだという。
姉は学校でというか、進学先で悩んでいることが多かったらしい。母親はそれについて一緒に悩み、解決しようとしたらしい。そして結局姉は看護師になった。母親は満足したのか何も言わなくなった。
それは鬱病からくる脱力らしい。俺はそこら辺学がないから全くわからないのだが、母親はもう俺たちに興味はなくて、猛烈に死にたいと願っているらしい。その頃の俺は何を言っていいかわからず『大丈夫。一人で生きていけるから』と返したらしい。
そして診断結果は小児がん。姉は絶望した顔をした。俺はやっぱり何もわからず姉を見ることしか出来なかった。姉は悲しくて苦しそうな顔をして『それは、どうすれば治りますか?』と言っていた。
「手術ですね。一度取り除いてから様子を見ましょう」
姉はそれから毎日俺を病院に連れて行った。何があっても毎日欠かさず。だから俺は修学旅行も林間学校も行ったことがない。それについて俺はなんとも思わず何も言わなかった。
時々襲ってくるなぞの頭痛。それは小児がんの症状のひとつだと言う。俺はもう死ぬんだな、と思った。姉は頭を抱えた。そして迎える手術の日。結果は成功。しかしその一年後に再発。またもや頭痛がやってきた。その時に医師が切羽詰まった顔で言った。俺の余命は5年。そう宣告された。姉はとうとうショックで寝込んでしまった。俺に残された自由時間はあとは5年。俺はそれをなんとも思わなかった。怖いとすら感じなかった。
まだ五年もあるじゃん。頑張ろ。姉貴。
そういうしかなくて悲しくなる。しかし手を差し伸べた時の顔は少し悲しそうで嬉しそうだった。俺はその笑顔だけで十分だった。