チクリ
...え?
「なんでそこでお...菜々子の話になるんだよ」
「だ、だってほら、祐誠の彼女だし?奥村さん、可愛くてスタイルいいしさ」
「...まぁお前よりはな」
「はっきり言うことないじゃんか」
チクリ、チクリ
心臓が痛い、モヤモヤする
なんで?どうして今更?
ーーそして撮影も終盤に差し掛かり、いよいよラブラブシーン
「ねぇーとーくん(祐誠の役名)!!ちゅーしてちゅー!」
「もぉ〜しょーがないなぁ!」
今まで出したことがないくらい甘々な声を必死に出して、祐誠の腕に自分の腕を絡ませる
祐誠はすっかり役に入り込んで、"ダーリン"を演じきっている
やっぱり俳優ってだけはある...別人みたい...
ていうかやっぱりこの映画での私たちって、気持ち悪すぎる...ラブラブを通り越してるよ...
そんな事を考えながらセリフを言っているうちに、とうとうキスのカットになり...
「はい、じゃあ目とじてね〜チューするぞ〜」
「はーい!」
んん〜!とめちゃくちゃ恥ずかしいけど私から顔を近づける
よし、この後は上手い具合に祐誠が顔を傾けて、キスのフリを...
するはず、だった
唇に、なにか温かい、柔らかいものが触れる
「...え.......」