「祐誠...」

「や、やっぱりやめよう、舞」




どうして...いや、そうだよ、別にあいつがこの場にいたってなにも不思議な事は無い




祐誠、この映画にも出演するんだ...




「祐誠くん、舞ちゃんとちょっと話し合ってもらえるー?」

「はい」




水着姿の祐誠が、私に向かって歩いてくる


...嫌だ、来ないで.....




「改めて、姉役の彼氏を演じる、竹下 祐誠くんだよ。まぁ、こんな説明いらないか!」

「よろしく」

「あ、うん.....よろ、しく...」




祐誠の冷たい目線が怖い

何も考えていないような表情が、私の心をえぐる


よりによって、なんで祐誠なの...




撮影場所は、浜辺の上に置かれたレジャーシート

そこに私と祐誠が座って、ラブシーンを撮影する




啓くんは待機場所のパラソルの下で待つよつに言われ、私たちは別行動をすることになった


せっかく私たちふたりだけの旅行だったのに...めちゃくちゃになっちゃったよ...




「で、どうする」

「えっなにが...?」

「キスシーン。綺麗に映るようにキスをする角度とか決めなきゃいけない。何度か確認するぞ」

「わ、かった...」




訳が分からないけど、とりあえず頷くと、祐誠の顔が私に近づいてくる

な、なにこれ、恥ずかしい...


思わずぎゅ、と目を瞑る




「おい、目は瞑るな。キスをするギリギリまで開けてろ。唇が触れる寸前に瞑る」


「あ、ごめん...え?でもフリでしょ?」


「当たり前だろ、ほら、もう1回するぞ」




もう一度、祐誠の顔が私に近づく


言われた通りに、唇が触れそうになる瞬間まで目は瞑らなかった




"お兄ちゃん、舞ちゃんにキスしてたんだよ!"




「っっ!!」




なんで、今そんなこと思い出すの...




「ねぇ...祐誠...」




「私にキスしたこと、ある...??」