「監督、いい代役が見つかりました!この子は安藤 舞さんです。以前竹下くんと一緒に撮影したことがあるので、大丈夫だと思います」
「あの、松本さん。私演技とか無理です...!絶対上手くできませんよ!」
「大丈夫よ、貴方なら!私が保証する!」
な、なんて無茶苦茶な...!!
あの後啓くんに松本さんが事情を話して、急遽私が代役を任せられる事になったんだけど...
やらないとは言ってないけど、やるとも言ってないし!無理矢理すぎだよ...
監督は優しそうな年配の男の人で、ありがとう、頑張って。と私の肩を叩いた。
いや、頑張ってじゃないし!?
「水着は着てるし、メイクは...これ以上しない方がいいね。舞ちゃん元々顔整ってるから、何も心配ないわ!
それに姉役の出番はここの場面だけだから」
「...もう分かりました、やります.....」
「本当にありがとう!このお礼は必ずするわ!それで、舞ちゃんが今回演技をするのは、ラブシーンよ。
キスシーンもあるけど、フリで大丈夫だからね。彼氏くんも心配しなくて平気よ!」
...き、キスシーン...!?
大丈夫じゃないし、心配いらなくもないでしょ...!?
松本さんの衝撃発言に私も啓くんも何も言わず目を丸くしているのには目もくれず、
松本さんは話を続けた。
「難しいセリフとかはないからね。
でも、どういう風に演じるかは相手と相談して欲しいの。でも大丈夫よ、相手役は...」
松本さんの視線が、私から右にずれた。
私と啓くんも、それに続き目線をずらす。
そこには、監督と話す背の高い男の人の姿があった。
...は?
「祐誠くんだよ」