「葵。大丈夫?顔が真っ青だけ…」
「だ、大丈夫!大丈夫!気にしないで!私は大丈夫だから…」
「そう?ならいいけど…。あ、先生来たから戻るね」
「うん」
文美ちゃんは私を心配してくれながらも、自分の席へと戻った。
「おぉい、お前ら〜席に着け〜」
カツラ感のある髪の毛にシワだらけの桂(カツラ)先生が入ってくる。
「朝のホームルーム始めるじょ〜。あ、噛んじまった」
「先生、もう年なんじゃな〜い?」
「シワたるんできたくない?」
「入れ歯ズレてんじゃね?」
そんな冗談でクラスの皆にどっと笑いが起こる。
でも私は、そんな冗談に笑えなかった。
さっき文美ちゃんが話した、おばあちゃんと男の人の事で頭がいっぱいだ
った。
どんどん不安が押し寄せてくる。
どうしておばあちゃんが男の人を家に案内したのか考えても、やっぱり分か
らない。
どうしよ…。
家に帰りたくないな…。
そんな思いを抱えたまま昼休みを迎えた。