「電話で長話もしよう。たまに喧嘩もするかもしれないけど、その時は……」

「その時は、すぐに仲直りしましょう」

結々は葵の腕に飛び込んだ。

葵は腕を広げて、しっかりと受け止める。

「鈴本さん、俺の名前呼んで。葵って」

結々はありったけの愛しさをこめて、彼の名前を口にする。

「うん、葵。葵……葵」

――葵!

葵の中で、まぶしい笑顔の晴那が呼びかけた。

いつもいつも追い続けてきた懐かしい姿だ。晴那の死んだあの日から、ずっと……

「葵」

――葵

今目の前にいる、結々の声と重なる。

それがだんだん葵の中で混ざり合って、やがて柔らかな陽だまりのように、胸に温かく溶けて消えていった。

……ああ、もう、大丈夫だ。

「ありがとう」

その言葉に、結々は泣きながら微笑んだ。