空の色が、だんだん明るくなっている。

最初のページの夜と夕方のはざまの色から最後のページの青空にかけて、徐々に色合いが変化しているのだ。

それはまるで夜明けの様子を映した映像を一コマ一コマに分けて見ているようであった。

『先輩』

遠くで声がする。

結々だ。

あの雨の日、傘を持って駆け寄ってきた彼女の姿が、写真の移り変わりの向こうに見えた。

そして、ぽっかりと空いた空白にいくつもの記憶が場面となって流れ込んできた。

全てが――そして朝日に立ちすくんだまま我に返った葵は、傍らに置いた携帯電話を手に取ると、結々の番号を探して通話ボタンを押していたのだった。