それからも変わらず、週末になるとよく二人で出かけた。

二月に入ると空気はさらに冷たさをまとって、思い出の写真とは違う景色を見せることもあったけれど、それでも結々が笑ったりはしゃいだりする姿を見るだけで葵の心は満たされた。

月日が流れるごとに、晴那とのアルバムはまだ訪れていない残りのページを少なくし、逆に結々とのアルバムは出かけた先での写真で埋まってゆく。

ファインダーをのぞく葵の隣で、結々はいつも、陽だまりのような笑顔を浮かべているのだった。




その日は日曜日で、よく晴れた朝だった。冷えた空気に身震いし、葵はベッドから起き上がる。

写真の現像を、昨日してきたばかりである。

前回出かけたときに撮った写真数枚を手に取り、本棚に立てかけてあった空色のアルバムと共に机の上に置いた。

それから、こもる空気に薄く窓を開く。

さっと冷たい空気が入り込んで、部屋に残る夜の名残をかき消していった。

……あれから、ずいぶん経ったな

記憶をなくしたあの日から、もうすぐ三ヶ月が経とうとしている。

振り返ればあの時は本当に目の前が真っ暗で、自分がこれから生きていくはずの人生という時間を絶望的に長く感じていたのだ。

指一本動かすことすら億劫で、寝ているか泣いているかの毎日が続いた。

発作の中で、自分を呼ぶ晴那の面影を何度も追い求めた。

だから退院後、結々という少女が自分の彼女であったことを改めて認識したときには本当に驚いたのだ。

晴那以外の女の子を受け入れられなかったし、結々のことを好きだったという自分に怒りすら覚えた。

けれど彼女のことを知っていく度に、まっすぐな気持ちを向けられる度に、結々への申し訳なさだけが重なっていった。

そして同時に、自分がなぜ結々を選んだのかを少しわかる気がするのだった。


アルバムに写真を入れ終わると、葵は最初のページから順にめくり始めた。

水族館から始まって、プラネタリウム、クリスマス――それらをこんなにも穏やかな気持ちで振り返る今があるのは、ひとえに……


最後のページまでたどり着く。

そこに挟まれた写真を見て、葵ははたと手を止めた。

風に揺れる花と、どこまでも広がる青い青い空――最初のページに戻る。

もう一度パラパラとめくりなおして、葵ははっと目を見開いた。