「大丈夫? ごめん、俺運ぶから」

熱を持った指を唇に当てる。

一緒に、と言ったその言葉の響きを忘れないように、もう一度心の中になぞった。




目の前で湯気を上げるラーメンに、葵はうわぁ、と目を輝かせた。

「いただきます」

あまり音を立てすぎないよう気をつけながら、結々はラーメンをすする。

お腹の底からじわじわと広がる温かさに、満足げに二人してため息をついた。

「あー、でもこんな時間に食べたら太っちゃうなあ」

笑顔のまま結々は言う。

「太るなあ」

「でも、罪悪感を感じながら食べるものって、なぜか特別美味しいんですよね」

そういたずらっぽく笑う結々に、葵も微笑みを返す。

「美味しいね」

「美味しいですね」

スープのうまみが体に染みる。

二人は穏やかな気持ちのまま、顔を寄せ合うようにしてラーメンをすすっていた。 

それから二人は、更けていく夜の中にぼんやりと座ったまま、ぽつぽつと会話を続けた。

今まで楽しいと感じたこと。

嬉しかったこと、悲しかったこと。

とりとめのない話の中では、嘘のない、心に浮かんだままを言葉にできた。

「ねえ、先輩」

「うん」