葵はありがとうと微笑んで、その紙袋を受け取る。

二人は道のわきにあるベンチに腰掛けた。

「開けてもいい?」

「はい」

店に飾られたモールが、軽快な音楽に合わせるようにきらきらと光を反射している。

頭上を覆う木の枝に絡みついた電灯は、点滅するたびに赤や黄に色を変えた。

「アルバム?」

紙袋から中身を取り出した葵が呟く。

結々は恥ずかしそうにうなずいた。

「先輩が撮った写真を、これに入れてほしいなと思って。この間のプラネタリウムでの写真も……」

これから葵の思い出の地を辿るときに撮る写真を、このアルバムに残していってほしい。

これまでの写真を葵がどうしていたのかは知らないが、記憶をなくしてからの写真を入れることで、いつか葵が辛い現状を乗り越えた時に、この一冊が彼の足跡代わりになってくれるかもしれない。

昼間の明るい空と同じ、優しい水色の表紙を見つめたまま、葵は静かにありがとうと言った。

「俺もね、プレゼントがあるんだ。鈴本さんに」

葵はバッグの中から小さな包みを取り出すと、結々の手のひらにのせた。

まさか葵がプレゼントを用意しているとは思わなかったから、結々はぽかんと葵を見つめる。

「開けてみて」

可愛らしく結ばれたリボンをほどく。

そっと中に手を差し込むと、出てきたのは髪飾りだった。

金色の星が付いたヘアピンに、繊細なラインストーンが揺れている。

街の光を受けて輝くそれに、言葉にならずに葵の方を見た。

「来る途中に見つけたんだ。なんとなく鈴本さんに似合いそうだなって思って、つい買っちゃった」

だから今日、葵は少し遅れて来たのだ。

気づいたその理由に、そしてこの飾りを見て自分を思い浮かべてくれたことに、結々は信じられない思いでいる。

葵の気持ちが嬉しい。

結々は大事につかんだヘアピンをそっと耳の横に挿した。

取り出した鏡の中で、目の縁をほんのり紅くした自分が、幸せそうに揺れる飾りを見ていた。

「どうですか?」

笑みを浮かべて聞けば、葵も微笑んで答える。

「すごく似合ってるよ」