待ち合わせは、駅前の広場にある、巨大なクリスマスツリーの下だった。

街路樹に光るイルミネーションの間を抜けて、人の波に逆らって歩く。

はやる気持ちのまま足早に歩いては、髪型が崩れていないかと歩調を遅くして確かめる。

そうしてたどり着いたツリーの下は一際多くの人でにぎわっていて、降り注ぐ様々な色の光が木漏れ日のように足元に広がっていた。

息を整えてあたりを見回すが葵はまだ来ていない。

まわりに立つ人たちは皆、待ち合わせをしているのか電話をかけたり駅の改札がある方を向いたりと落ち着かない。

やがてやってきた恋人や友達と合流した彼らが一人、また一人とその場を離れてゆく中で、結々は一人、心細さを抱えながらその場に立ち尽くしていた。

腕時計を見ると、約束の時間を少し過ぎている。

手袋をした手をすりあわせて、寒さに肩をすぼめる結々の吐息は、空気に白く曇って消えていった。

と、遠くに一つの影が見えた。

薄暗さの中へ目を凝らすと、息を切らした葵がこちらへ駆け寄って来ている。

ツリーの光に照らされた葵の顔は見たこともないくらいに焦っていて、結々はその意外な表情に驚いた。

「ごめん、待たせちゃった?」

「ううん、私もさっき来たところなので」

慌てて首を振る結々に葵はほっと息をつく。

二人は並んで、駅前のアーケードの方へと歩きだした。

どこへ行きたい? と聞かれて、とっさに浮かんだのは駅前のおしゃれな店が建ち並ぶアーケードだった。

いつでも行けるであろうそんな近場へ、わざわざデートとして行くべきではないのであろうが、プラネタリウムの帰りに二人で見たあのまばゆい光が瞼の裏にちらちらと揺れて離れなかったのだ。

隣を歩く葵をそっと横目に見上げると、街の浮足だった雰囲気のせいか、いつもより楽しげに見える。

二人で出かける時に感じる、うきうきとした弾むような気持ちは、葵の寂しげな表情を前にいつも持て余してしまうのだが、今日だけは彼も自分の持つ気持ちに近づいてくれているのかもしれない。

「なんか荷物多いね。買い物して来たの? それ」

葵が笑って右手に持つ紙袋を指さした。

「あ、これは先輩に」

本当は帰り際に渡そうと思っていたのだが、もういいやと葵の方へ差し出す。

「クリスマスプレゼントです。気に入ってもらえたらいいけど」