出かけるのは週末と決めていたから、平日の間葵と会う機会は少なかった。

それでも学校内で時折見かける彼は、要の隣で相槌を打ちながら微笑んでいて結々は安心する。

突然の「タイムスリップ」から約一ヶ月、葵はこちらの世界にたどたどしくも慣れてきているようだった。


そして水族館へ行ってから一週間がたった土曜日の夕方、夕食のおすそ分けを手に葵の部屋を訪ねた結々は煙で焦げ臭い部屋へと通された。

「どうしたんですか、これ」

「いや、料理してみようと試しに作ってみたら、うっかり焦がしちゃって」

そう言ってはにかむ葵に、結々もつられて微笑むと抱えていたタッパーを差し出した。

「ちょうどよかった。よかったらこれ食べてください」

「ありがとう。よかった、今日は夕食抜きかなって思ってたんだよ。やっぱり慣れないことはするもんじゃないね」

「きっとすぐ上手になりますよ」

向かい合わせで座りながら、結々は一人、喜びを噛みしめていた。

また葵の笑顔を見ることができた。

料理の失敗を恥ずかしがるという、ただそれだけの意味しか持たないというのに自分に向けられた微笑みが嬉しい。

葵は例のダンボールを開けると、取り出したアルバムを二人の間にある机にのせた。

「この間はありがとう。水族館、付き合ってくれて」

「そんな。私、とっても楽しかったから」

「そっか。それならよかった」

結々は目の前のアルバムに遠慮がちにそっと触れる。

「ちょっと見てもいいですか?」

「どうぞ」

前回見たときはぱらぱらと見る程度だったから、改めてじっくりと見直したい。

そんな思いと共に、最初のページから順にめくってみる。

水族館の写真の次に現れたのは、また別の場所でのものだった。

誰かに撮ってもらったのだろう、白いドーム型の建物を背景に、肩を寄せあった葵と晴那がこちらに笑顔を向けている。

一瞬、ズキリと重い痛みを胸に残しながらも、それを必死に押しとどめて顔を上げる。