「どうする? せっかくだから見ていく?」

しかし開演時間を見てみると次の公演は今から二時間後となっている。

「いえ、かなり待たないといけないし、また次にしましょう」

本当は二時間なんてどうということはなかった。

何をするでもなく葵の隣に座っているだけで、退屈など感じないのだから。

ただ、初めて楽しげに思い出を振り返る葵を見た直後に二人でショーを見るのは、彼の記憶に割り込んでしまうようでなんとなく気が引けてしまうのだ。

とっさにそう思ってしまうことを悲しく感じながらも、それでも今はやめておこうと思う。

これは思い出を塗り替えるのではなくて、辿るためのデートなのだから。