「他に一緒に写っているのは、高校の時のクラスメイト。ほら、要もいる。写真じゃ結構幼い顔してるでしょ? 病院で目が覚めた時、いきなり成長してるもんだからびっくりしたよ。ああ、中学の時のもあるのか……」

そう説明しながらそっと微笑む葵の瞳には、霞のように影が落ちている。

今の葵は高校一年生で時が止まっているのだから、本当ならこの写真のような幸せな景色の中にいるはずなのだ。

それが今は小さなアパートの一室で、まだ出会って間もない女の子とぎこちなく「過去」を見つめている。

「いい写真ですね。先輩、とっても楽しそう」

結々が見たことのない顔で笑う葵は、今よりも少しあどけない顔立ちをしている。

静かに頷く葵は、ひとり言のようにぽつりと言葉を落とした。

「ここに写っている場所もみんな、もう変わっているのかな」

四年もあったら変わるよな、と続けるその声音があまりに寂しげだったから、結々は元気づけるように葵の目を真っ直ぐ見て言った。

「じゃあ、確かめに行ってみましょうよ」

「え?」

驚く葵に、結々は明るく笑いかける。

「このアルバムの思い出の場所に行ってみませんか? もしよかったら、二人で」

葵が無くした四年間を見てみたい。

結々とまだ出会う前の葵が、どんな景色を見てどんな風に感じたか、写真ではわからないことが、そこにはきっとあるのだろう。