中にはキーホルダーやノート、小物など、細々としたものがぎっしり詰め込まれている。

一見ただのガラクタにしか見えないようなこれらはすべて、二人の大切な思い出の品なのだろう。

「こうして見るとほんと、変な感じだよな。ついこの間まで晴那や俺が持っていたものが全て、こうやって段ボールに入ってるなんて」

そして隣の結々に視線を移して、困ったように笑う。

「俺にとってはこの間でも、本当は四年以上も前の話なのか。晴那がもう死んでるって知った後、晴那に関するものが全部、どこにもないことに気が付いてさ、慌てて探し回ったんだ。そしたら、実家の押入れの奥にこの箱を見つけたんだよ。ご丁寧にガムテープでぐるぐる巻きにしてあったから、開けるのが大変だった」

三年前、晴那を失った葵は晴那にまつわる思い出の品をこの箱に詰めて、閉じ込めてしまったのだろう。

そして晴那がもうこの世にいないという事実と共に押入れの奥に遠ざけてしまったのだ。

多分その事に、葵も気づいている。

箱の中から一冊のアルバムを取り出した葵は、切なげに眼を細めて表紙をそっと撫でる。

赤いチェック柄の可愛らしいそれを開くと、ぱりっと音がして沢山の写真が目に飛び込んできた。

「これはこの前撮ったやつだ……」

結々も横から遠慮がちにそっとのぞき込む。

ページをめくるたびに、そこには楽しげな笑顔の場面が次々に現れる。

海、水族館、公園、様々な場所の中にいつもいる一人の女の子に気づいて、結々は思わず尋ねた。

「この二つ結びの人が晴那さんですか?」

こちらに向けてポーズをしているものから、ふとした自然な横顔、それから拗ねたように歩く後ろ姿など、まるで彼女の一瞬一瞬を追いかけるような写真がどのページをめくっても存在している。

青い空や輝く夕焼け、そしてその中に納まる微笑みは結々が見てきた彼の写真とは全く異なる物であった。

「そうだよ。この子が晴那」

葵の長い指が、少女の面影をそっと辿る。

その動きを見つめながら、だから葵は人の写真を撮らなくなったのかと、結々は一人静かに納得していた。