瞼の裏へ差し込む光に、葵はふと目を覚ます。

ゆっくりと起き上がると、部屋はほの明るくて、もう日もすっかり高く昇っていた。

……俺、あれからどうしたんだろう

熱に浮かされながら、優しい声に導かれるように話をしたのを覚えている。

胸に溜まっていた言葉を吐き出して、そのまま泣いてしまったことも。

そういえば体はすっかり軽くなっていて、熱も引いるようだった。

ぬるくなった額の冷却シートに手を当てながら視線を落とすと、すぐ横にベッドに体を預けて眠っている結々の姿があった。

「そうか。あのまま、眠っちゃったんだな」

ひんやりとした床に足をついて立ち上がる。

足を投げ出して座る結々の頬には、さしこむ光に照らされてうっすらと涙の跡が残っていた。

……どうして

そしてすぐに思い当たる。

……ああ、俺と一緒に泣いてくれたのか

窓際に歩み寄って、カーテンをさっと開くと、まばゆい光が部屋全体にあふれる。

いきなり明るくなったことに驚いたのか、後ろで結々が目を覚ましたのがわかった。

「あれ?ここ……」

まさに飛び起きるといった感じでびくっと体を揺らし、きょろきょろとあたりを見回している結々に思わず少し笑って、葵は声をかける。

「おはよう」

しばらく不思議そうにぼんやりと葵を見ていた結々であったが、昨夜のことを思い出したのか途端に顔を赤くする。

そんな彼女の隣に行くと、葵は腰を下ろした。

「ごめん、こんな床で寝かせちゃって。寒かったでしょ」

「いえ、私こそ、なんか泊まっちゃって」

「風邪ひいてない? 大丈夫?」

「平気です。それより先輩、体調はもう大丈夫なんですか?」

葵はこくりと頷く。

「もう大丈夫。鈴本さんが看病してくれたおかげ。ありがとう」