「先輩、晴那さんってどんな人だったんですか」

しばらくの間ののち、葵はぽつりぽつりと話し始めた。

「そうだな、晴那は幼稚園からの幼馴染で、明るくて……結構奔放な奴だったなあ、いっつもとんでもない悪さ考えては俺を巻き込んでたし。俺も何度怒られたことか」

はは、と微かな笑い声が聞こえる。

しかしそれは虚しく闇に溶けてしまって、後にはしんとした静けさが残るだけだった。

「なんで死んじゃったんだよ」

葵のかすれた声が、小さく震える。

「なんで置いていったんだよ。どうして勝手にいなくなるんだ。いつもずっと、あんな……」

抑えきれない嗚咽がもれる。

葵のすすり泣く声だけが聞こえる中、結々の頬にも涙が伝った。

声を押し殺して泣きながら、葵が口にする晴那への想いを、ただただ隣で聞く。


葵が泣いている。

三年前、晴那が死んだ時に見せなかった涙を、今ここで流している。

それは葵にとっての、悲しみのやり直しの一つになるのだろうか。

葵が晴那と築き上げた思い出はあまりにも尊すぎて、かけがえのないもので、結々はこんな時何も言えない。

葵の隣に座ってこうやって泣くことが彼の悲しみに寄り添うことになるのか、それはわからないけれど、何かが変わるといい、葵が楽になればいいと願いながら結々はそっと目を閉じた。