なんとか作り上げた料理は少し不恰好で、タッパーに詰める時には少しためらったけれど、何度も味見したからと思い直して蓋をぱちんと閉める。

葵の好みは知らないが、それでも毎日品を変えては、彼の家へ運ぶ日々を続けていた。

葵が失踪した夜は、家に帰り着いた途端、涙が止まらなくなって一晩中泣いていた。

死にたかったという言葉が深く刺さって、心が痛んでは涙となって溢れた。

葵に会うのが気まずいというよりは今は会うのが怖いという思いさえあったが、葵が何も食べていないというのが気になってその二日後、おかずを詰めて持っていったのだった。

呼び鈴を鳴らして、出てきた葵は相変わらず心ここにあらずといった感じではあったけれど、料理を突き返すこともしなかったから、結々は今日もこうやって葵の家に足を運ぶ。

葵とは特に会話をするでもなく、ただ料理を手渡して帰るだけであったが、それでも葵の無事な姿を確認するだけで安心できるのだった。

「あ、結々ちゃーん!」

タッパーがいくつも詰まった保冷バックを受け取った葵が、曖昧に頭を下げてドアを閉めた瞬間、階段の方から声がかかった。

「遠野先輩」

葵の部屋を訪れようとしていたのか、にこりと片手をあげてこちらへ歩み寄ってくる。

「結々ちゃんも葵のとこに来てたの?」

「はい。ちゃんと食べてないって聞いて心配で、それでご飯を作って持ってきたんです。迷惑かもしれないんですけど」

「へぇ、すごい。迷惑なんかじゃないでしょ、全然」

そして要はしばし考えるそぶりを見せると、結々に向きなおって言った。

「結々ちゃん、今時間ある? ちょっと話せないかな」

何の話だろうと戸惑う結々が連れて行かれたのは、アパートの近くにある公園だった。

葵を探した雨の日、彼がいないだろうかとここにも立ち寄った。

灰色の雲が空を覆って、雪でも降りそうな寒さだったが、この辺りにはお茶ができるようなカフェもないのだから仕方がない。

公園のベンチに座っていると、自販機の前に立った要が結々に声をかけた。