それから二日間、結々は葵の見舞いに行かなかった。

いや、行かなかったのではなく、行けなかったのだ。

葵のことは心配で、早く会ってもっと詳しい現状が知りたいのだが、葵に向けられたあの冷たく突き放すような目を思い出せば、気持ちとは裏腹に足がすくんで動けない。

先輩たちもあれから病室へは行きづらいらしく、またもともと特別に親しい仲ではなかったのも相まって、誰も何も知らないようだった。

話を聞きつけた絵美が何度か心配そうに声をかけに来てくれたが、それさえも今の結々には耳に入らない。

葵のことで頭がいっぱいなのに、そこから先へ行くことができない。

そんなもどかしさを抱えて、事故から三日目の今日、結々は病院のエントランスをうろうろと歩き回っていた。

「あれ」

不意に頭上から降ってきた声に顔を上げると、ちょうど階段を降りてくる青年と目があった。

「あっ、この間の……」

「葵の見舞い?」

要だった。前回会った時よりも、その声には幾分柔らかさが含まれている。

「はい、そうなんですけど……」

口ごもる結々の心情を察したかのように、要は結々の正面まで歩いてくると、にこりと笑った。

「なあ、この後何か用事ある?」

「いえ、特に何も」

「じゃあさ、俺、今から昼飯食いに行くんだけど、一緒に行かない?」

 いきなりの誘いに驚いたが、葵のことが何か聞けるかもしれないと思いなおした結々はおずおずと頷いた。