それから私たちは、遊園地を歩き回った。



ゴーカート、スワンボート、スカイサイクル。


絶叫系ではない乗り物を制覇していく。



まるで、女友達と遊びに来たみたいに、はしゃぎ回って、冗談を言ったり笑ったりして。



“デート”なんて微塵も感じられないような空気を、きっと綾月が出してくれている。




「あと残ってんのは、メリーゴーランドと観覧車ぐらいか」


「そうだね」


「メリーゴーランドかぁ……。雪瀬乗る? 俺見ててやるよ」


「絶対嫌だ。綾月が乗るなら、私写真撮ってあげるよ」



すっかり“友達”の空気に馴染んだ私は、そんなイジリもすんなり返せるようになっていて。



「うわ、絶対乗らねー」


「えー、残念」



こんなやり取りが楽しくて、懐かしい。



中学の。

隣の席だったあの頃に戻ったみたいで。







もし、綾月が好きだったあの頃の私が、今の二人を見たら、どう思うのかな。



二人で遊園地に来ていることを、羨ましく思ったりするのかな。







「あ、まだあるじゃん!」



綾月が突然、私の後方を指差して立ち止まった。



「え?」



振り返ると、どんよりと負のオーラを醸し出す大きな建物が視界に映る。



周りの賑やかさに似合わない、禍々しい黒い看板。



「死霊達の廃病院……」



キャー、と中から断続的な悲鳴が聞こえてきた。



出口から出てきた小さな子どもは、泣きじゃくりながら母親に抱かれている。



「怖、そう……」


「はは、雪瀬ビビってんのか?」



顔をのぞかせた綾月がニヤリと笑って、先に進んでいく。



「えっ、入るの!?」


「もちろん。行こーぜ」



絶叫系ほどではないけれど、お化け屋敷も怖くて苦手。



だけど綾月はどんどんお化け屋敷へ向かっていく。



「え、えぇー……」



一人、声を漏らして。綾月の数歩後ろをついて行った。