『ありがとうございましたー』



アナウンスの声とともに星が消えて、明かりがつく。




一瞬で、あの日の記憶が打ち消されたみたいに。現実に引き戻された。




「やっべ、すごかったなー!」


「そうだね」



今、隣にいるのは、春木先輩ではなく綾月で。



ここは、夏の夜の山ではなく、都会の水族館。



春木先輩は香恋と付き合っていて。


私の恋は、もうだいぶ前に終わっている。










もう。


あの頃とは、違う。











急に胸の奥に冷たい風が吹いた。




「……ふ」


「雪瀬?」




失恋したんだなぁ。





隙間風に吹かれるように、胸の奥が冷える。



春木先輩との楽しかった思い出が、次から次へと頭の中を流れて、心臓を締め付ける。







“え! 雪瀬ちゃんの誕生日、昨日だったの!?”


“あ、はい”


“なんだよ言ってよー。じゃあ来年は雪瀬ちゃんの誕生日に夏の大三角見に行こう!”





あまりにも、綺麗な思い出――。