『左上に見えるのは夏の大三角で――』




説明のアナウンスに導かれて、左上を見上げる。



キラキラと輝く星空。



強調された三つの星。






“俺、夏の大三角好きなんだ”



去年の合宿。みんなでプラネタリウムを見に行った。



香恋の計らいで、春木先輩の隣に座ることになって。



興奮しながら星を見ている春木先輩の隣で、私はずっと落ち着かなかったな。



ちょうどこんな風に、夏の大三角の説明が始まった時、春木先輩は夏の大三角が好きだと話してくれた。



私は話を合わせようと必死で、「私も好きです」なんて言ってしまって。



その日の夜、私と香恋と春木先輩で、本物の夏の大三角を見に行った。



今から思えばあれは、春木先輩にとったら香恋が目的だったのかもしれないけど。




夏の夜の澄んだ空気。


山の上の静けさ。


少し生暖かな風。




都会から見える夜空とは違う、黒く明るい星空。



隣で興奮しながら語る春木先輩が、なんだかいつもと違って見えて。



胸の奥が躍って、疼いて、落ち着かなかった。




今でも鮮明に思い出せる。



あの時の、私。