「へ……」



思わず声を漏らしてから、香恋の言葉の意味を追った。



ダブルデートということは、香恋と私の二人じゃないということ。



デートだから、香恋の彼氏の春木先輩も一緒なんだ。



じゃあ、私は誰と。



そこまで考えて、そういえば私は綾月と付き合っていることになっていたんだと思い出した。



香恋に、綾月と付き合うことになったと嘘をついた、あの日以来、綾月とは会っていない。


そんなこと忘れかけていた。



たぶん、きっと、綾月も忘れているだろう。



ダブルデートなんて絶対できない。



もう綾月に迷惑をかけられない。




「ごめん、綾月はその日用事があるとか言ってた気がする」



でまかせの嘘をつくと、それを信じた香恋は「そっかぁ」と残念そうに視線を伏せた。



「うん、ごめんね。その日は春木先輩と二人で楽しんで」



言うと、香恋は「うーん」と煮え切らない返事を返した。



伏せていた香恋の視線が、もう一度上を向く。



「じゃあさ、綾月くんの空いてる日、また聞いといてくれない?」



香恋はそう言ってにこりと笑った。



え、と声が出そうになるのを寸前のところで引き止めて、バレないように笑顔を向ける。



「うん、わかった」



そう返すと、香恋は納得したように頷いて。


なんとか、一時的ではあるけれど、ダブルデートの話は流れてくれた。