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「紫映ちゃんにまで先越されたよぉー、彼氏欲しいー!」


「綾月くーん、法学部にイケメンの独り身いないのー?」



バスが発車してから一時間。



もう何本目かわからないビールの缶を口につけて、先輩たちが綾月に絡む。



「独り身は多いけどイケメンかどうかは……」



肩を組まれ、珍しく押され気味の綾月が苦く笑って答える。



「そうだぜー、お前ら高望みしすぎなんだよ。俺ぐらいにしとけってー。なぁ?」



どう捉えたらいいのかわからない酔っ払いの言葉に、綾月が「そうっすよねー」と軽く笑った。



やっぱり綾月は社交的だなぁと、そんな姿を見ながら思う。



「ちょっとぉー、先輩! 紫映から綾月くん取らないでくださいよー」



缶ビールを片手に、綾月の肩に置かれた先輩の手を剥ぎ取る香恋。



「香恋ちゃんも酔ってるねー、どお? ビール、美味しいでしょ?」


「美味しいでーす!!」



いつも以上にテンションの高い香恋がビールを持つ手を掲げた。