前期の授業が終わり、長い夏休みが始まって二週間が経っていた。



久しぶりの大学の校舎に八月の蝉の声が反響している。



「荷物詰め込んだ人から乗り込んでってー」



春木先輩が、『天文研究サークル合宿御一行様』と貼られた大型バスの乗降口で声を飛ばす。



暑い暑いと言いながら、ガヤガヤと乗り込んでいく馴染みのメンバーたち。



「夏一番の行事が始まったねー」



香恋がポイっと荷物を荷台に詰め込んで楽しそうに飛び跳ねた。



「テンション高いね」



言いながら香恋の荷物の隣にドサっと荷物を置く。



「そりゃあ今年は堂々とお酒飲めるし!」



春に誕生日を終えて既に二十歳の香恋は、そう言ってニヒヒと笑った。



確か去年の合宿では、楽しそうにお酒を飲む先輩達に混ざって少しだけ飲もうとした香恋が春木先輩に止められてたな。



「いいなー」


「紫映だって明日には二十歳じゃん。変わんないよ、もう今日から飲んじゃえば?」



合宿はバスの道中もみんなお酒を飲んで宴会状態になる。



明日は私の二十歳の誕生日。



一日早ければ、今日のバスから堂々とみんなに混ざれるのに。



「一日ぐらい春木先輩も許してくれるって!」



そう言った香恋が、乗降口で指示をとばしてる春木先輩をチラリと見た。