「香恋ちゃんも紫映ちゃんもボーッとしちゃって、どうしたのー?」



不意にかけられた先輩の声に、ハッと思考を止めた。



「あ、すみません、いろいろ考え事してて……」


「俺以外の男のこと考えてたら許さないよ?」


「わっ」



耳元に囁かれた少し大人な春木先輩の声に、心臓が飛び跳ねる。



「ち、違いますよ! 今日の講義で出された課題のことを考えてて……」



言いながら、チラリと紫映を見ると、紫映は「香恋、顔真っ赤」なんて言って楽しそうに笑っている。




紫映にはずっと幸せそうに笑っていてほしい。


紫映、せっかく手に入れた幸せ、手放さないで。


あんな女に負けないで。



今度こそ紫映が幸せを逃さないように──あたしが、何度でも後押しする。




~~香恋side end~~