隣に座る紫映に目を向ける。
紫映はあたしの視線に気づかない。
手に持つスナック菓子を、口に届く直前で制止させたまま、目的のない視線を斜め下に向けている。
一瞬だけ。その横顔に、悲痛な表情が浮かんだ。
あたしは何度、この瞬間を見ただろう。
最初はわからなかったけど、今はその原因がわかる。
以前、たまたま綾月くんを見かけて声をかけようと近付くと、まるでそれを遮るかのようにあたしの前に出て綾月くんに駆け寄り抱きついた女。
綾月くんも綾月くんでそれを振り払おうともしないから──、
“綾月くん! 紫映見なかった?”
咄嗟に紫映の名前を出して声をかけたあたしに。明らかに怪訝な顔を向けてきた女。
あたしに気付いた綾月くんが、その女の腕からスルリと抜け出であたしに近付くと、我が物顔で綾月くんの隣について来て──、
まるで嘲笑うかのような視線を向けて、あたしに挨拶してきた女。
“雪瀬紫映さんの友達ですか。私は綾月先輩の高校からの後輩で、八坂美代です”
紫映を知っている。ということは、紫映もこの女と会ったことがある。
美人だけど気が強くて我も強そうな、あの気にくわない女が──。
紫映が、元気がない理由に違いないんだ。
紫映はあたしの視線に気づかない。
手に持つスナック菓子を、口に届く直前で制止させたまま、目的のない視線を斜め下に向けている。
一瞬だけ。その横顔に、悲痛な表情が浮かんだ。
あたしは何度、この瞬間を見ただろう。
最初はわからなかったけど、今はその原因がわかる。
以前、たまたま綾月くんを見かけて声をかけようと近付くと、まるでそれを遮るかのようにあたしの前に出て綾月くんに駆け寄り抱きついた女。
綾月くんも綾月くんでそれを振り払おうともしないから──、
“綾月くん! 紫映見なかった?”
咄嗟に紫映の名前を出して声をかけたあたしに。明らかに怪訝な顔を向けてきた女。
あたしに気付いた綾月くんが、その女の腕からスルリと抜け出であたしに近付くと、我が物顔で綾月くんの隣について来て──、
まるで嘲笑うかのような視線を向けて、あたしに挨拶してきた女。
“雪瀬紫映さんの友達ですか。私は綾月先輩の高校からの後輩で、八坂美代です”
紫映を知っている。ということは、紫映もこの女と会ったことがある。
美人だけど気が強くて我も強そうな、あの気にくわない女が──。
紫映が、元気がない理由に違いないんだ。