そんなことがあってからだったな。



紫映が、ずっと密かに想い続けていた、中学の同級生の男の子の話をするようになったのは。



「香恋の知られたくないこと勝手に知っちゃったから、私の恥ずかしい話も聞いてくれる?」

とか言って。




あたしはその話を聞くのが好きだった。



彼のことを話している紫映は、少し恥ずかしそうで、なんとなく可愛くて。



でも最後はいつも、


「好きな人と、友達が幸せになったんだから、これで良かった」


そう言って切なく笑う。



紫映は優しい。


放っておいたら自分の気持ちを押し込める方を選んでしまう。



きっと、また同じ選択をしてしまうんじゃないか。