驚いたように弘くんは徹さんと私の会話を見守っている。


「話?一体何の...ですか?」

「どうして突然、姿を消した?」

「...自分の胸に...聞いてみればいいじゃないですか」


私は意地悪だ。だって徹さんは自分の言ったことを憶えているはずないのに。
無意識で言ったのに。


「俺が何かしたのか?お前を傷つけるようなことをしたのか?」


乱れる胸の音。

しました。間違いなくあなたは私を傷つけました。


胸の前でキュッと拳をつくると、私は意を決して彼を見据える。


「カナさんて...。カナさんて誰ですか?昔の...昔の彼女とかですか?」


お願い元カノだと言って。そうすれば、私たちは元に戻れる。

私、『嫉妬してました』って謝ればすむことだもの。



「カナ?」


お願い、元カノだと言って。



「...俺の妹だ」