──お湯が沸いたのを知らせる音。

それを注ぐ音。

カチャカチャとカップとスプーンが当たる音。

紙をめくる音。



「う...ん?」

「ごめん起こした?」


弘くんは読んでいた新聞を閉じる。

私はボサボサの髪のまま重い体を起こすと、髪をかき上げる仕草をした。


「弘くん...起きてたんだ」

「おはよう」

少し照れたような弘くんの声。


「おは..よう」

「風花も飲むか?」

「あっうん」


弘くんはキッチンで私の分のコーヒーを作ってくれた。


どうして私は弘くんと朝を迎えているんだろう?

本当だったら...。


乾いた喉が、その答えを教えてくれた。

絶望と胸を切り裂く切ない記憶は、私から水分さえも奪っていた。