「弘くんこそ」

「俺は会社帰り。残務処理に追われててさ、気づいたらあの時間になってた。オフィスからここまで近いから、いつも歩いてるんだ。そしたらお前が虚ろな瞳でフラフラと歩いてるから、ビックリしたよ」

「そうだったの」

「...六ツ島さんと何かあったのか?」


ギクリと肩が揺れた。


「そうなんだな」

弘くんの声は確信をはらんでいた。


「...うん」


またジワジワと涙が溢れてくる。


「俺に話せる?」

「今はまだ、無理」

「そっか」


弘くんはしばらく黙っていた。

いつものように遠慮なく会話する、私たちはいなかった。