「──ほら」

湯気の立ったマグカップを差し出される。


「ありがとう」


私はそれを受け取る。


「落ち着いた?」

「うん」


雨に濡れて冷えた体を温めるためにシャワーを借り、今着ているトレーナーも彼のものだ。


あはっ、おっきい。徹さんは弘くんより少し大きいから、もっとぶかぶかだろうな。

考えれば、又涙が出て来る。


両手で抱え込んだマグカップは私の冷えた体を温めてくれるけれど、心までは無理のよう。


私は弘くんの住むワンルームマンションの床に座り、壁にもたれておぼろ気に天井のシミを見つめる。

私の心のシミはどんどん広がるばかり。


私の態度にきっと弘くんは困惑しているはず。涙を拭うと「ごめんね」無理に笑顔を作った。



「風花の服は干してあるから」

「ありがとう。ごめんね、弘くん疲れてるのに」

「気にすんな。そんな事よりお前どうしてあそこにいたんだよ?」


弘くんは私の隣に座る。