私は弘くんを振り切って歩き出す。


「待てって」

「離してよっ!」

「いいから来い」


腕を捕まれると、強引に彼は歩きだす。


「離してったらっ」

「離さない」

「私に構わないでっ!!」

「何があったんだよっ!?」


その一言が私の心を再び壊した。

思い出には到底なりえない記憶。


「うっ...」溢れて来るのはやっぱり涙。

「風花...。俺の家に来いよ」


弘くんが傘を差しだしてきた。

彼に手を引かれながら歩きだした。


私たちを徹さんが見ていたことを、知らずに。