──私たちがホテルの部屋に戻った時には既に深夜2時を回っていた。

ルームサービスで軽い食事を取って、お酒も少しだけ飲んだ。

普段お酒に強い彼の顔がほんのりと赤くなって、眠たそうな顔をしている。

出張で福岡から帰ってきてプールで泳いだんだもの、それはそうだよね。


徹さんは眼鏡を外すとそれをサイドテーブルへ置いた。

わあ、やっぱり凄く整った顔。見慣れているのに改めてドキっとしてしまう。
眼鏡も素敵だけれど、外した顔も好き。


「先にシャワーを浴びてこい」

「いや、徹さんこそお先にどうぞ」

「そうか...それとも一緒に入るか?」

「まさかっ!!」


私は叫んでいた。


笑い声を残して彼がバスルームに消えるのを黙って見送る。



...余裕...なんだ。



そんな彼の態度に少しだけ切なくなってくる。

だって、彼は初めてじゃないんだもの。

今までにどれだけの女性を抱いてきたのかな?

別れてしまったけれど、その時はきっと愛していたはず。

考えると、何だか嫌。私、彼の過去に嫉妬してる。


でも...私が最後の女になれたらいいな。