毎夜、いつものようにオーナーの携帯から聞き慣れた着メロが響く。
私達はいつものように今までぴったりと寄り添っていた肌を離し、それでも握り合う手はいつものように離さなかった。
オーナーはしばらく音を奏でる携帯を見つめた後、素知らぬように通話ボタンを押した。
「もしもし。……あー、まだもうちょっとかかるよ。うん。……30分くらいかな?……え?そうなん?じゃあ腹すかせとくわ」
聞き慣れたやり取り。会話の向こうからは聞き慣れた声。
あー、私悪いことしてるな。と思う瞬間。
オーナーには、美人な奥さんがいる。
子供は、いない。