「神谷は俺の事、あんまり覚えてないだろ?」


「覚えてるよ…」


そんな他愛もない会話がただただ楽しかった。
聡介が夢にまで見た初恋の相手が今ここにいる偶然は、もしかしたら夢なのかもしれない。

そんな風に二人がまったりと時間を過ごしていると、店の人が聡介から預かったケーキを綺麗に切り分けお皿の上にお洒落に飾り付けて持ってきてくれた。

麻子はそのケーキを見て驚き、すぐに聡介を見た。


「秋山くん、このケーキ…」


聡介は麻子の反応が嬉しかった。


「俺は、中学の頃、神谷と話した一語一句、全部覚えてるんだ。

好きな食べ物は何?って聞くと、何回聞いてもハーゲンダッツのチョコミントって答えてた。
ミントとチョコの組み合わせが絶妙にいいの~なんて、幸せそうな顔してさ…

そこのお店、偶然にもチョコミントのケーキを置いてたんだ。
どうしちゃったんだ?っていうくらい、すごい偶然だろ?」


一人でペラペラ話している事に気付いた聡介は、優しく麻子を見た。


「もしかして、もう、チョコミント嫌いだった…?」