「神谷、今夜は俺、神谷の言う事は何でも聞く。
ケーキをダメにした代わりに、今夜の時間を神谷にプレゼントする」


聡介はそう言った後、急に恥ずかしくなった。


「中学の時の同級生として、再会のお祝いをしようよ。
バレンタインなんてくそくらえ~って叫びながら、さ?」


麻子は嬉しそうに笑っている。
10年経った今でも、聡介の目に映る麻子はあの頃の神谷のままだ。


「じゃ、秋山くんが買ってくれたケーキを一緒に食べたいな」


麻子はそう言って、ケーキを持ち上げ微笑んだ。


さっきまでどんよりしていた二月の空に、今は星の輝きが戻ってきた。
聡介は知り合いの店に電話をして、ケーキの持ち込みをお願いした。

こんなに最高で最強な奇跡を、何が何でも自分のものにすると心に誓いながら…



そして、二人は聡介の知り合いの店で、不思議な再会に乾杯した。