五時半にケーキを受け取った俺は、神谷の働く会社が入っているビルへ向かった。

一番確実なのは、会社に顔を出して神谷に直接渡す事だけど、俺はそんなイケメンでもないし体だって無駄にデカいし、とにかく目立つ事はあまり似合わないし、第一そんな勇気なんてこれっぽっちもない。

だから、地道にビルの正面玄関の近くで待つ事にした。
よくよく見てみると、正面玄関より裏の出口を使っている人達が多い。
俺は何だか嫌な予感がして、裏口で待ったりまた正面に出てきたり、挙動不審な動きを繰り返していた。

結構な時間を待った気がする。
でも、神谷は中々出てこない。

何だか俺も疲れ果てて、正面玄関の前のコンクリートにドサッと座り込んだ。
後、15分待って来なかったらもう帰ろう…

そう思った瞬間、遠くから神谷が歩いて来るのが見えた。

俺は瞬きもせずに神谷を見た。
朝はあまりの慌ただしさに、神谷の顔や大人になった姿をちゃんと見たわけじゃない。

今、俺の目に映る神谷の姿は涙が出るほど綺麗だった。
そして、やっぱり俺は神谷が好きだって何度でも叫びたい。

いつの時代も、神谷の存在は一瞬で俺を虜にした。