周りに謝りつつ、残りの仕事を必死に終えるともう定時を30分ほど過ぎてしまっていた。

辺りを見渡すと、半分くらいの人がすでに帰ってしまっていた。

藤田さんと小林さんの姿もなくて。

もうチョコ渡したのかな。

二人は一緒に帰ったんだろうか。

その光景を見なくて済んだ事に少しほっとして、でも、藤田さんに会えなかった事に少し悲しくなった。

帰ろう。

帰り支度をしながら山崎さんの席をのぞくと、鞄はあるけど姿はなくて。

明日またちゃんと謝ってお礼を言おう。

正面玄関まで来たとき、

「きたがわー。」

と呼ぶ声と、走る足音が後ろから聞こえてきた。

その声は間違えるはずもなく、藤田さんだ。

「藤田さん…?」

振り返ると私に向かって走ってくる藤田さんがいた。

私に何の用だろ?

「焦ったよ。ちょっと席離してたらいないんだから。」

少し息があがっていて、慌てて追いかけてきたことが分かる。

「あの、何か?」

「体調、良くないんだろ?送ってく。」

電車通勤だろ?俺、車だから。

と車のキーを見せながら微笑んでいる。

「えええっ!?そ、そんなのいいですよ!」

大体、体調不良でもなく、原因はあなたです。

とは言えないけど。