「仕事もできて、容姿も完璧で、私なんかより佐伯家を知ってる詩織さんが……」



「…何よ、嫌味?」



「そ、そうですよね嫌味にしか聞こえないですよね…え、えと…なんて言えばいいか…」



詩織さんは蒼さんに追い返されたような身。



もし私が詩織さんでもこんな言葉聞いたら嫌味かと思う。



アワアワとする私に、詩織さんは小さく笑った。



「…ほんとおかしな人」



「あ、いや、その……すみません…」



「郁人の言う通りバカ正直なのね」



最後にそう言って、どこか柔らかな表情を残し踵を返す詩織さん。