佐伯くんと主従関係

私の住む街には、世界にも有数の大金持ちが住んでいる。



立派な豪邸には大きな門がそびえていて、一般人が住む家くらいの大きさの犬小屋がある。



東京ドーム2個は入ってしまいそうな(無駄な)豪邸には、4人の男が住んでいる。



この街で知らぬ人はいない



___佐伯財閥



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♂佐伯 蒼(サエキ ソウ)22

♂ 幹也(ミキヤ)20

♂ 悠(ユウ)18

♂ 郁人(イクト)23

♀三葉 結衣(ミツバ ユイ)19


「あんた…また落ちたの…?」



高校を卒業して2ヶ月が過ぎた。



進学を希望せず、だからと言ってやりたいことも見つからず、ただただ面接を繰り返しては落ちる毎日。



そんな毎日に母親も、私自身も呆れてる。



「いいよ、どうせ興味なかった仕事だし」



「興味ない興味ないってあんたねぇ…そんなこと言ってたらどこにも「分かってるってば」



私が悪いのは分かってるけど、お母さんの小言は聞き飽きた。



こんなんじゃ就職できないことくらい私が痛いほど分かってるし、親にもこれ以上迷惑かけたくない。
「…ん…?これって…」



と、テーブルの上に置いてあった広告を何気なく手に取ったときだった。



あの有名な佐伯財閥から執事募集の呼びかけがあったのだ。



「え、時給1万って…」



「やめときなさいよー、そこ住み込みで働くんでしょ?あんたじゃ無理よ無理無理」



たしかに辛そうだけど、実の母親が娘にむかってそんなに無理を連呼するもんじゃないよ…



「…時給1万かぁ」



分かってるけど時給1万に惹かれない人間なんていない。
だって掃除洗濯料理お世話をしていれば平気で1日12万は稼げる計算になる。



12万で何ができると思ってんの?って感じ。



あれもこれも、私が欲しいものはほとんど全部手に入るほどの金額。



安い女?



言いたきゃなんとでも言わせとけばいい。



「私、ちょっと挑戦してみる!」



「はぁ?」



善は急げ!と広告に書いてあった電話番号にかけ、面接の予約をした。
目指せ、夢のお金持ち…!



そう意気込んで鼻息荒くガッツポーズをした。



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「とは言ったものの…」



当日、大きな大きなお城のような家に入って言葉を失った。



参加者がズラァーーーーっと数え切れないほど集まっているではないか。



100人なんかじゃ収まらない、200、300、もしかしたらそれ以上かもしれない。



「こ、こんなの選ばれるわけ…」



選ばれるのはたった1人。
今までどんな会社にも選ばれなかった私が、こんな所で選ばれるはずがない。



しかも…



「美人ばっか…」



服の指定はないと書いてあったけど、まさかパーティ衣装が正解だったとは…



私なんていつもより少し清楚感出しただけの貧乏人コーデ。



ジロジロと見下される視線が痛い。



帰りたい、今はそれ一心だった。



「三葉さん、三葉 結衣さん、お入りください」



1つの部屋から名前を呼ばれ、ビクゥ!と体が跳ねた。
もう私で何人目なんだろう…



1人目とか覚えてんのかな



というか私みたいな貧乏人の話しなんてちゃんと聞いてくれるのかな



服装見た瞬間アウト!とか思うんだろうなぁ



うわぁ!嫌だ!入りたくない!入りたくないよう!



「ではまず自己紹介からお願い致します」



履歴書にだってこれと言った趣味も特技も書いてないし。



唯一何かあるとすれば高校のときに取った漢検1級くらい。



そんなことここじゃなんの意味も為さないよなぁ…!!