ドアが開き、入ってきたのはロッチェとロイと・・・ラギア。

わたくしはすぐさま立ち上がり、微笑む。



「ラギア、こちらに来るなんて珍しいですわね。どうかしまして?」

「うん。
アイナ、間諜がいる」

「・・・突然ですわね
詳しくお聞きしても?」

「うん。
今朝不自然に雑巾が廊下の至る所に散らばっていて、現在雑巾が消えた」

「雑巾、ですか」



考える。

そんな無意味な悪戯をするような者はここにはいない。そんな暇もない。

何者か、部外者の犯行でしょうね。


では、雑巾をばら撒く理由は?

・・・ばら撒く。
刃物をばら撒くのならわかるけれど、雑巾。

・・・雑巾は汚れを拭くために使うわね。
水を含ませ、絞り、廊下を拭く。

では、もし水以外、何か有害なものを含ませたのなら。





「ラギア、その散らばった雑巾に何か変わったことはありまして?」

「只人ではわからないほど微かに、甘い香りがした」



ごく微かな甘い香り。

廊下の至る所に散らばった雑巾。

現在消えた雑巾。


間諜はこちらの情報と混乱、戦力の減少を求める。





「・・・わかりましたわ」


まずいですわね、これは。



「ロイ、ロッチェ!魔猪(マイ)を誘き出す薬品がばら撒かれた!至急、中央棟から全員の退去をっ!!」

「「はっ!」」


「きゃああああああ!!!」


即座に頷き駆け出す2人。

しかし、2人がドアを開けた音をかき消すように、悲鳴が響き渡った。



遅かった・・・!!!