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「ほら、とってもお似合いよ、アイナ。
ねぇ?ジーク」

「はい。さすが母上です。
アイナ、可愛いよ」

「ありがとうございます・・・っ」

「あらあら。アイナは泣き虫さんね」

「アイナ、手で目をこすってはいけない。
赤くなってしまうだろう?」



優しい手が、頭を撫でて。

柔らかな白いハンカチーフが、目元にそっと当てられる。


泥で汚れた鮮やかな赤のドレスは、ふわふわとした桃色のドレスに変わっていて。

泣いてしまったわたくしを責めずに彼らはわたくしを甘やかし。

そんなわたくし達を侍女達が温かな瞳で見守っている。



ここは、わたくしが世界でいちばん好きな場所。

この方達は、わたくしが世界でもっとも愛する方達。





「それで、誰にこんなことされたのかしら?」

「・・・オズワルド殿下たち、に」



お昼を食べた後だった。

お城の植物園に珍しい花が植えられたと、侍女達が話しているのを聞いて見てみたくなった。

それで、植物園に向かおうとしたところにあった馬屋の近くで、オズワルド殿下とそのお友達達に会って。


罵声と共に、馬屋の近くにあった肥溜めに突き飛ばされた。




でも、仕方がないのだ。



わたくしは、国王陛下が戯れに手を付けた庶民の女から生まれた、“賤しい第九王女”。

だから、混じり気のない高貴な血を引く彼らがわたくしを虐げるのは、当然で。


悪いのは、賤しいわたくしなのだから。