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夢を見る。


泣きたくなるほど懐かしくて優しい夢。



必ず覚める、泡沫の夢。






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「アイナ」


優しい声が聞こえて、わたくしは俯いていた顔を上げた。

しゃがんで視線を合わせてくれているその人を見て、堪えていた涙が溢れた。



「ジーク兄様」


鬱蒼とした森のような深い緑色の瞳は優しくわたくしを見つめていて。

温かな手がわたくしの頭を撫でた。




「アイナ、よく頑張ったな。偉い偉い。
服を着替えに行こう」


ひょいっと。

ジーク兄様の腕がわたくしを縦抱きにした。


ぬくもりに包まれて、わたくしは心の底からホッとした。

硬い胸元におでこを擦り付けて、甘える。



「・・・きたないのに、ごめんなさい」


言葉ではそう言いながらも、服を掴む手を緩めることはできなかった。



「気にするな。アイナが安心できる方が大事なのだから」


硬い、鍛えられた身体は柔らかくわたくしを包み込んでくれた。







––––そうして向かったのは、いつものあの場所。

かの方がいらっしゃる、美しい部屋。



「母上」

「ごきげんよう、ジーク。
アイナ、ああ、またなの?酷い格好だわ」


衣擦れの音がして、柔らかくて細い指がそっとわたくしの頭を撫でた。

ジーク兄様の胸元から顔を上げれば、美しいかの方の、ジーク兄様と同じ緑色の瞳と目が合った。



「シルヴィア様・・・」

「可愛いアイナ、安心して。わたくしが今よりもっとあなたに似合うドレスを見繕うわ」


鬱蒼とした森のような、深い緑の瞳が優しく細まった。