私は、馬鹿なのかもしれない。

ううん、きっと馬鹿だ。


だけど、何もできない私が今、せめて誠実でいたいと思うのは、きっとおかしなことじゃない。




〈そっか〉

静かな声が頭に響く。


変わらない表情のまま、淡々とラギアは私に伝える。



〈じゃあアサヒは、異世界から落ちてきたんだね〉





まるで何もかも知っているかのように。






『・・・え?』


私、異世界からきたって、言ったっけ?

日本から来たとしか、言ってない、よね?



〈思考読めるから。昨日から知ってた〉

『!!!』


そ、うだ。

ラギアは思考が読める。


私、心の中では何度も異世界って言っていた。



じゃあ、ラギアは、私が異世界の日本ってところから来たって思ってるって知って・・・


『し、信じてくれるの?』



声がかすれてしまうのは、なんでだろう。

なんの感情も見えない綺麗な綺麗な顔を、ラギアはかすかに上下させた。



〈信じる〉






その一言が、どうしようもなく、嬉しかった。

おぼつかない世界でひとつ、私に確かな足場ができたように感じた。




「・・・っとう」


震える声で。
下手な発音で。

それでも、ここの言葉で伝えた。




「ありがとう、らぎあ」



ラギアは、やっぱり無表情で。

だけど確かにひとつ頷いてくれた。




「・・・どういうことです?愛し子様」

「アサヒ、違う世界から来たって」

「は?」

「へ?」

「ほ?」


美女、ロイ、ロッチェの順で何やら間抜けな声が漏れた。


ぽっかーんとした顔を見合わせるロイとロッチェ。

美女は眉間にしわを寄せて額に手を当てた。