「びゅみゅ、じゃーびゅ・・・?」

「それ地名じゃない」

「じゃあ、なんですか」

「考えてる声・・・?」


私がむむむと悩んでいる間にも、ラギアと美女は何か話し合っている。

なんだろう。すごく難しそうな顔だ。

美女さんは眉間にしわまで寄せている。


「だいじょうぶ?」

「貴女の言語能力が全く大丈夫ではありませんね」

「ひょ?」

「それより、どこなんです?その二ホンとやらは」

「びゅみゅーみょ・・・わかりません」

「・・・・・・聞き方を変えます。
貴女、どうやってここまでいらしたんですか?」

「・・・わかりません」

「はあ?」



アイナとの異世界言語講座で大活躍したわかりませんが炸裂した。

場所をどう言えばいいのかも、どうやって来たのかもまるでわからない。


美女はそんな私に胡乱な目を向ける。




「わかりませんって・・・上手く言葉にできないということですか?
それなら愛し子様に説明なさい」

〈アサヒ、俺に説明して〉

『う、うん・・・。
あの、ラギア、その、信じられないかもしれないけど・・・』

〈うん〉

『私、落とし穴に落ちたらいつの間にか崖の上にいて・・・』

〈うん〉

『だ、だから、どうやって来たのかとか全然わかんなくて!
あの、本当に、わかんないんだ・・・』


まったく変わらない表情が、いつものことだと知りつつも不安になる。

どうしよう。おかしいって、怪しいって、思ってるかな。思ってるよね。

でも、ごまかせないよ。

思考を読んでしまうラギアをごまかせないし、何より優しくしてくれた人たちをごまかしたくない。