シェイは、ぽりっと頬をかいて私の頭から手を離した。




「18じゃあ、俺が勝手に頭撫でるのは失礼でしたね。
すみません、レディ」

「ひょ?すみません?」


「18」と「すみません」しか聞き取れなかった私はきょとんと首を傾げた。

はて。なんで今謝られたんだろう?

18歳とは思わなかったごめん、というような意味かなぁ?今の状況的に。



辺りをつけて、私はぶんぶん首を振った。

今の私が知ってる言葉を使うとすると・・・これだ!!!



「だいじょうぶ!」

「だいじょうぶ?・・・ああ、気にしてないってことですかね。ありがとうございます」


伝わったらしく、シェイはヘーゼルの瞳を柔らかく細めた。

私は伝わったことが嬉しくてにこにこしてしまう。


だって!あんまり伝わらないから!私の語彙力と発音能力のなさのせいで!




「・・・なんかやっぱり18歳には見えませんねぇ」

「頭撫でたくなりますよね」

「ええ・・・って、ムム殿はちょっとというかかなり大人びすぎてますけどね?俺はいつもどんな12歳だって思ってますからね?」

「こんな12歳ですよ」

「サラッと流さないでくださいよー。
もう少し甘えてもいいと思いますよ?」

「主人がアレですので」

「あー・・・それ言われると何も言えませんねぇ」


ふっとシェイが苦く笑った。

ひどく不本意で、痛そうな笑みだった。


「しぇい、だいじょうぶ?」

「え?ああ、大丈夫ですよ。
大丈夫じゃないのは俺ではないので」

「ひょ?」

「ケルン様」

「はいはい。余計なことは言いませんよ。
女性用宿舎に入るんですよね?随分と引き止めてすみませんでした」



どうぞ、と。

シェイがドアを開けるのに促されるようにして、私はムムの後に続いて建物の中に入った。


シェイの苦い笑みが何を意味するのか。

気になりながらも知る術は無かった。